++文章修行家さんに40の短文描写お題++

+目次+

 00. お名前とサイト名をどうぞ。また、よろしければなにか一言。

 01. 告白
 02. 
 03. 卒業
 04. 
 05. 学ぶ
 06. 電車
 07. ペット
 08. 
 09. おとな
 10. 食事
 11. 
 12. 
 13. 女と女
 14. 手紙
 15. 信仰
 16. 遊び
 17. 初体験
 18. 仕事
 19. 化粧
 20. 怒り
 21. 神秘
 22. 
 23. 彼と彼女
 24. 悲しみ
 25. 
 26. 
 27. 芝居
 28. 
 29. 感謝
 30. イベント
 31. やわらかさ
 32. 痛み
 33. 好き
 34. 今昔(いまむかし)
 35. 渇き
 36. 浪漫
 37. 季節
 38. 別れ
 39. 
 40. 贈り物


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 00. お名前とサイト名をどうぞ。また、よろしければなにか一言。
   名前はお好きにどうぞ。サイトは「no title」です。
   何だか小ネタ特集のような様相を呈しております;TSだったり関係なかったり。
   40番から逆行しながら2ヶ月ちょっと…思ったより長かったような気がします。
   ひとつでもふたつでも、お気に入りが見つかれば幸いです。






 01. 告白  【65文字】 

云ってしまおうかどうしようか、もう長いこと迷っている。血の通う指先や
掌からさえ伝わってしまいそうで、触れるのも怖いなんて笑えない。



 02.   【68文字】

「お前なんか嫌いだ」「そうか」「大っ嫌いだ」「私もだよ」「ごめん、
嘘。駄目だ、全部取り消し」「…私もだよ」「…くそ、笑ってんじゃねぇよ」



 03. 卒業  【66文字】

たくさんの写真は、残した想いの証。これ以上無いほどに隣り合って過ごした
日々との別れに、それぞれの道を歩み行く友と、泣きながら笑った。



 04.   【67文字】

朝起きて、カーテンを開けたら良く晴れていた。よし、と彼は決意する。
週末に予定していた日帰り旅行は繰上げだ。鞄一つで旅支度など事足りる。



 05. 学ぶ  【68文字】

知っているけれど解らなかった、たくさんの事。腑に落ちる、という経験を重ねた。
失敗も成功も飽きるほど繰り返して、実戦は何よりの財産になる。



 06. 電車  【68文字】

がたがたごとごと、電車が揺れる。ゆらゆらゆらゆら眠くなる。「…乗り過ごしたな」
「乗り過ごしたね」「ま、いいか。山手線だし」「ま、いいね」



 07. ペット  【63文字】

どうも何処かで撫でてきたらしい。犬を飼いたいとちびがねだり、家政を取り仕切る
長兄は渋面をつくった。「これ以上動物増えてもなー」



 08.   【64文字】

例えばついと伸ばされる腕。ことりと預けられる額。そっと寄せられる頬。
触れていないと落ち着かないのだという、その無意識が恐ろしい。



 09. おとな  【68文字】

「小さい頃、大人って何でも出来るって思ってた」「過去形か」「うん、過去形」
弾みをつけて軽く髪を撫ぜてやると、子供のような顔で彼は笑った。



 10. 食事  【68文字】

ただ食べられる、という事実に安堵する。皿に盛られた物を咀嚼し嚥下するだけの食事でも、
摂取できないよりはマシだ。それほどに調子は悪くない。



 11.   【70文字】

積み上げられ、其処此処に散らばった紙束の中から彼女はそろりと身を起こした。
近頃同衾してくれるのは本ばかりと笑う顔は、云うほど不満気でもない。



 12.   【68文字】

闇の中目を見開いて、自分が眠っていたことを知る。何だ夢かと呟いて、
その如何にも残念そうな口振に愕然とした。ほんの暫く、会っていない位で。



 13. 女と女  【69文字】

甘いケーキと香の良い紅茶。友達がにこにことそれらを平らげる姿に、彼女は
少し安堵した。昨夜からの目元の赤みは、今は化粧で上手く隠されている。



 14. 手紙  【68文字】

一枚の紙切れを前に、彼は創作に苦しむ小説家のようだった。長い沈黙の果てに
お久しぶりですと記されたそれは、完成までまだ時間を要するようだ。



 15. 信仰  【68文字】

試しに両手を組み、跪き頭を垂れて祈る真似をしてみた。瞳も閉じたが、
分かったのはそこに信仰はないことだった。信じろと囁く神に、感動はない。



 16. 遊び  【70文字】

ふと目線をあげると、真向かいに陣取った従兄弟が目端に真剣な色を帯び始めていた。
子供相手のカードゲームだというのに、彼はどうにも負けず嫌いだ。



 17. 初体験  【67文字】

彼はまず首を傾げ、次にふむと一つ頷いた。携帯電話から、かけなれた番号を
呼び出す。この全く新しい味覚を、従兄弟に毒…味見をさせるために。



 18. 仕事  【66文字】

じりじりと目減りしてゆく休暇に、彼女はうんざりと眉を顰めた。例の、
あの変わりない「日常」が、舌なめずりをして待っている気がしたので。



 19. 化粧  【67文字】

瞳は大きく、睫毛は長く。唇は形良くふっくらと。持てる限りの知識と技術を
駆使した結果に、彼女はおおいに満足した。今宵こそは、決戦の時。



 20. 怒り  【67/69文字】

笑っているうちに引けばいいものを。理性に相手を許す言い訳を考えさせながらも、
ふつふつと沸き起こる苛立ちは納得しない。…舌戦準備、完了。

「残念です」自分向けて云われたものではなかったけれど、その静かな一言で
心が冷えた。しん、と辺りから音が消える。それは、怒りより恐ろしい声。



 21. 神秘  【69文字】

ただ溜息が零れた。それ以外の反応を忘れた。揺らめき砕け、湧き上がり溢れ出す光。
そして心を震わせる青/蒼/藍。形ないものが輝き、水音が響いた。



 22.   【69文字】

「人の噂も49日って言うだろう?気にするなよ」「75日だ、ばーか」その少しずれた
励ましを受けて平気な顔をしていたら、噂は3日で消えてしまった。



 23. 彼と彼女  【69文字】

朝食の席にどっかりと座し新聞をめくる家長に、そっと珈琲が差し出された。
この家の長姉と長兄は、性別を逆にすれば正に昭和の夫婦の理想像である。



 24. 悲しみ  【70文字】

笑っても怒ってもいない彼を見るのは久しぶりだった。焦点の合わない目と、
感情の欠けた人形のような顔。気付いたら、泣けばいいと腕を伸ばしていた。



 25.   【68文字】

生きていくのに強さなんていらない。ごく幼い頃にそう言い捨てた人は、
今日も穏やかに笑っている。ただ良く生きるのは難しい、と時折呟きながら。



 26.   【68文字】

看取るということは、ただその死の瞬間に立ち会えばいいというものではない。
けれど。冷たくなった手に、罪悪感が込上げるのは止められなかった。



 27. 芝居  【65文字】

見れば、同行の友人は既に夢の世界だった。舞台では男が耳障りな台詞を
紡いでいる。どうも、今回の脚本家と自分達は意見が合いそうにない。



 28.    【69文字】

指の背で相手の頬を辿る。問いかけるような視線には笑顔を返した。
このカタチに、魂が宿るなら。温かな体温も脈打つ血潮も、何と愛しい事だろうか。



 29. 感謝   【68文字】

ありがとうを云う時の喜びで煌いた目や凄い凄いとはしゃぐ声。それら
は何より自分を喜ばせる。飛び切りの贈り物を貰っているのは、己の方らしい。



 30. イベント  【64文字】

彼の小さな手帳に記された小さな印は、その重要度と主張度は比例しな
い。その日をどれだけ心待ちにしているか。まだ彼自身しか知らない。



 31. やわらかさ  【70・65文字】

小さな掌は子供のみ持ち得る瑞々しく滑らかな感触。笑み零して頬を寄
せたくなる程。ふみょ、ととりあえず押してみたら。「肉球かよ」と突っ込まれた。

お気に入りのもの。ふわふわのクッション。カシミヤのマフラー。ファー
の付いたジャケット。しなやかなコットン。あの人の髪と肌と声と瞳。



 32. 痛み  【69文字】

痛い、と傍らの人が呟いた。傷のない身体の胸元を片手で押さえ、首を
傾げまるで痛がっているように見えない。見ている方が泣きたくなる仕草だった。



 33. 好き  【67文字】

「好きです好きです心から〜♪」思い出したフレーズを歌ってそれから
ちょっと笑った。云えるわけない気持ちばかりだ。『…愛していますよと』。



 34. 今昔(いまむかし)   【68文字】

「今は昔のことだけど」昔聞かされた物語を今語り継ぐ。きっとこの子も。
いつか、同じように物語を誰かのために紡ぐのだろう。今が昔になる頃に。


 35. 渇き  【65文字】

傍らの人に手を伸ばし、互いの体温が同じになるまで抱き締めてそして
漸く安堵する。彼等は二人とも、いつも満たされて初めて渇きに気付く。



 36. 浪漫  【66文字】

瑞々しい花弁を一撫で。喰えもせず役にも立たない愛でるばかりの薔薇
なぞを相手が喜ぶと思う、男とは何と夢見がちなのか。可愛い、と思った。



 37. 季節  【71文字】

早朝に夕刻に眩しく日を浴びた小道は既に夜の傘下にある。やがて愛らしい
草花も深い緑も鮮やかな紅葉もない一時が来るだろう。凍てついた大気が輝く冬が。



 38. 別れ  【66文字】

さようならは云わない。告げるのは願いを込めたただ一言だ。軽く手を
挙げ指を曲げる。「またね」…言葉にならないありがとうを笑顔に乗せて。



 39.   【64文字】

相棒の右手人差し指の第一関節を、オラクルがぱくりと噛んだ。「…何だ?」
「食べたら美味しそうかと思って」「我慢しなさい」「ちぇー」



 40. 贈り物  【66文字】

思い浮かぶのは繊細な銀細工の小箱。細く絡む模様。あの人に贈りたいもの。
たっぷりのレースと甘いキャンディ。…たったひとつに毒を潜めて。





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