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仕事をひと段落させ、お茶を淹れる。
楽しみにしていたDVDを展開させて、ゆったりとしたソファに腰を下ろした。
膝の上に登ってきたおらとりおを撫でてやると、甘えるように丸くなる。ほんのりと暖かく柔らかい体をもう何度か撫でると眠ってしまって、何だか可愛い。変には育たなかったから、もっと別の名前でもよかったかもしれない。…今更だけど。
淹れたての良い香のする紅茶を一口。
ああ、幸せだなぁ、と思ったら。


がす、と頭の上に尖った何かが落ちてきた。
そして同時に降り注ぐのは、
「俺には仕事させといて、自分は優雅にゴキュウケイですかい〜い御身分ですねオラクルさん?」
如何にも恨みがましそうな響きをした低い美声だ。
「何だ、オラトリオ今終わったのか?遅かったな」
顔は正面に向けたまま、書庫で寝てるのかと思ったよと笑ってみせれば、相棒は咽喉で威嚇するような呻き声をあげた。振り向かずとも相手がどんな顔をしているか、大方の予想はつく。眉をしかめ唇をゆがませ、不機嫌全開な顔を脳裏に思い浮かべオラクルはくつくつと笑った。
ちら、と目線をあげれば、それに伴って頭が揺れる。気付いたオラトリオが、乗せていた顎を僅かに浮かせてくれた。そうして少し俯いて見下ろしてくる紫雷の瞳に目線をあわせると、思い描いた通りに如何にも不機嫌そうな顔に向けて、オラクルはにっこりと笑いかけた。
「ほら、終わったんなら一緒にDVD見ようよ。もう始まっちゃってるんだから」
「お前なぁ〜」
にこにこと屈託なく笑ってみせるオラクルの、その白々しいほどに罪のなさそうな(あくまでもなさそう、だ)笑顔とのんびりとした言葉に、
「待つ、とか、手伝う、とか。してくれたっていいだろう!」
がすがす、とまた乱暴にオラトリオは顎を落とした。
痛い痛いと身を竦めながら、まるで何か新しい遊びでもしているかのようにオラクルは笑った。
痛いのは痛い。それなりに痛いが、しかしそれほど痛くもない。どちらかというと、くすぐったいのだ。もっと言うなら、身体より気持ちが。…オラトリオには少々悪いが、はっきり云って心底楽しい。
そのうちに、ふう、と疲れたように溜息をついてオラトリオの攻撃が止まった。顎はやっぱりオラクルの頭に乗せられたまま、オラトリオの腕が肩の上から降りてきて抱き締めるようにオラクルの胸の前で交差する。オラトリオの胸がオラクルの背中に押し当てられ、ぐっと体重がかけられて、オラクルは少し肩を丸めてその重みを逃した。身体の幅が狭くなった分、一層深く囲い込む腕に包まれる。
「待ってた、待ってた」
宥めるようにぽんぽんとそのオラトリオの腕を軽く叩いてオラクルが言う。
「待ってたから、一緒にDVD見よう?」
甘えるように(それはまるで子供の我侭だけれど)誘えば、何か誤魔化されているような気がする…などとぶつくさ呟きながらそれでもオラトリオはオラクルの隣に座った。背凭れに体重を預けるときの軽い溜息は状況を甘受するサインだ。(最終的にこうして折れてくれるのは彼のほうなのであることが多いので)ありがとうの気持ちを口には出さずに笑いかけて、オラクルは相棒のための紅茶を淹れた。

自分の分の紅茶と好みの茶菓子の準備が完璧に整う頃にはオラトリオの機嫌もすっかり直っていて、どうでもいいような話を交わして二人で笑った。DVDの内容とかもっと関係ないこととか、隣り合ってソファにもたれて色々だらだらと。そういうふうにして過ごす時間は、それはそれで、よくある光景だけれど。
それなりに、幸せな時間。











「そういえば最近ねー、『好きなコほど苛めたい』のココロが結構よく解るようになってきたんだー」
「…あ゛?」






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ヤな感じに性格の悪いオラクルさん(そしていい感じに誤魔化されてるにーさん…)。ちょっと方向性を見失ってないか、自分?
ええ、大きい人たちが単にじゃれてるだけっす。そんだけっす。
それだけで幸せなティータイム(私が)。

オラクルからの中学生的アプローチと、それに同レベルで応えるにーさんの図とも云う。…オラクル成長物語?よかったねにーさん!高校生くらいまで育てば手ぇ出してイイかもよ(え、もうちょっと駄目?)(←てゆーか同レベルで応えるな、同レベルで)

ちなみにどんなDVD見てたかは各自のご想像にお任せします。世界遺産でも環境モノでもアクションでもコメディでもラブストーリーでも、お好きなものを二人と御覧になってください。